墓じまいを考え始めても、「菩提寺に何と伝えればいいか分からない」「関係を悪くしたくない」と、連絡そのものを先延ばしにしてしまうことがあります。菩提寺が遠方にあるときは、最初の連絡を手紙にする方法があります。落ち着いて事情を整理して伝えられ、住職も時間のあるときに読めます。ここでは、手紙を「墓じまいします」という通告ではなく「相談のお願い」として書くための、入れる要素・例文・書き換える箇所・送る前後に確認することをまとめます。お寺への切り出し方そのものは記事「お寺への切り出し方と、離檀の伝え方」、墓じまい全体の流れは記事「墓じまい全体の流れを7ステップで整理する」を参照してください。
手紙という方法が向くとき
手紙が「必ず最善」というわけではありません。ふだんから電話や対面でやり取りしている間柄なら、その方法で構いませんし、電話やメールが失礼というわけでもありません。これまでの関係と、住職が連絡を受け取りやすい方法で選びます。手紙は、次のような場合に向きます。
- 遠方で、すぐには対面で伺えない
- 込み入った事情を、落ち着いて順序立てて伝えたい
- 最初の相談で伝えたいことを、整理してから渡したい
最初の手紙は「通知」ではなく「相談」
最初の連絡は、離檀通知でも契約解除通知でもありません。次のことが自然に伝われば十分です。
- 長年お世話になっていることへの感謝
- 墓じまいを考えるようになった事情
- まだ一方的に決めているわけではなく、相談したいということ
- 今後の進め方について、話をしたいということ
「離檀します」「墓じまいをするので承諾してください」「◯月◯日までにご対応ください」のような、一方的な通知に見える書き方は避けます。過剰にへりくだる必要はありませんが、「墓じまいを検討しております」「一度ご相談したくご連絡いたしました」「今後の進め方についてお話を伺えればと思っております」という相談ベースにします。すでに住職と相談が進み、正式に決まっている段階なら、その旨をそのまま書いて構いません。
手紙に入れる要素
- 時候のあいさつと、日ごろの供養へのお礼
- これまでお世話になってきた感謝
- 墓じまいを考えるに至った事情(実家が遠い、高齢で通えない、承継する人がいない など)
- 閉眼供養と離檀について相談したいという申し入れ(決定の通告にしない)
- 訪問または電話の希望(候補日を2〜3、あるいは「ご都合のよい日を教えてください」)
- こちらの連絡先(氏名・住所・電話番号)と、返事を受け取りたい方法
お布施や離檀料は、手紙では金額に触れず「お布施や離檀料についても、あわせてご相談させてください」にとどめます。金額の相談は、住職と直接話す場のほうが行き違いが起きにくくなります。手紙で「離檀料はいくらですか」だけを前面に出さないようにします。
そのまま使える例文
◯で示した部分を自分の事情に置き換えて使います。丸ごと写すのではなく、事情の段落は自分の言葉に直してください。
例文A:遠方で通えなくなった
拝啓 ◯◯の候、ご住職様におかれましてはご清祥のことと存じます。平素より当家の墓所のご供養を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、当家の墓所について、ご相談したくお手紙を差し上げました。私は現在◯◯県に住んでおり、高齢の身で◯◯(お寺の所在地)まで参ることが年々難しくなってまいりました。今後の管理を考え、墓じまいを検討しております。つきましては、閉眼供養と離檀について、一度ご相談させていただけないでしょうか。お布施や離檀料についても、あわせてご相談させてください。
ご都合がつく時期に一度お伺いできればと存じます。ご都合のよい日をお知らせいただければ幸いです。まずは書面にて失礼いたします。 敬具
例文B:高齢になり、この先の管理を子ども世代に残したくない
前略 当家の墓所について、ご相談があり筆をとりました。長年にわたりご供養いただきましたこと、心より感謝しております。
私も年を重ね、この先のお墓の管理を子どもや親族に引き継がせることが難しいと考えるようになりました。私の代で墓じまいをすることを検討しております。閉眼供養をお願いしたく、また離檀の手続きや必要な費用についても、あわせてご相談させてください。
遠方のため、まずは書面でお伝えし、その後お電話またはお伺いのうえで詳しくご相談できればと存じます。ご連絡は下記へお願いいたします。 草々
例文C:まず相談したいだけで、まだ決めていない
拝啓 当家の墓所の件で、近くお電話でご相談させていただきたく、ご連絡いたしました。実家が遠く、管理が難しくなっており、墓じまいも含めて今後の進め方を考えているところです。まだ結論を出しているわけではなく、まずはご住職のお考えを伺えればと思っております。
◯月◯日から◯日の間で、ご都合のよい時間帯にお電話を差し上げたく存じます。可能な日時を、はがきかお電話でお知らせいただけますでしょうか。 敬具
例文のどこを自分用に書き換えるか
- お寺の名称・ご住職の呼び方
- 当家の墓所の場所(お寺の所在地、区画が分かる範囲で)
- 墓じまいを考えるに至った事情の段落(自分の言葉で)
- 希望する連絡方法(電話・はがき・訪問)と、可能な日程
- 差出人の氏名・住所・電話番号
戸籍や家族全員の氏名・生年月日など、相談の段階で不要な個人情報までは書きません。
送る前に確認すること
- お寺の名称・ご住職の呼び方・当家など、◯の差し替え漏れがないか
- 差出人の氏名と連絡先が入っているか
- どの墓所のことか、お寺側で特定できる情報があるか
- 墓じまいを考える事情が、自分の言葉で書けているか
- 一方的な通知ではなく、相談の申し入れになっているか
- 費用のことだけを問い詰める文面になっていないか
- 返事を受け取れる連絡方法(電話・はがきなど)を添えたか
返事が来たら確認すること
手紙は「送って返事を待って終わり」ではありません。返事が来たら、住職と相談しながら次を確認していきます。寺院・墓地・自治体によって扱いが違うため、必要な項目だけを一つずつ確認します。
- 閉眼供養(魂抜き)の日程と、お布施の考え方
- 墓地の使用者(名義人)が誰になっているか。名義変更が必要か
- 「埋蔵の事実を証する書面」を出してもらえるか(改葬許可申請で使う添付書類です。改葬許可そのものは市区町村へ申請します。→ 記事「改葬許可証とは?遠方でも進める行政手続きの整理」)
- 墓石の撤去・区画の返還の段取りと、石材店との調整をどちらが行うか
- 離檀料やお布施の額。もし高額を提示されて折り合いがつかないときの進め方は、記事「離檀料を高額請求されたときの対処|落ち着いて進める5ステップ」にまとめています
「寺院の承諾がなければ墓じまいできない」「住職が改葬許可を出す」というわけではありません。改葬の許可は、いま遺骨がある市区町村に申請します。寺院にお願いするのは、供養と、添付書類となる書面の発行です。
まとめ
菩提寺への最初の手紙は、相談の申し入れとして書きます。感謝を先に伝え、事情を説明し、閉眼供養と離檀の相談をお願いし、訪問か電話の希望を添える。金額は手紙に書かず、直接の場で相談する。宗派や寺院によって作法は異なるので、迷うときは菩提寺や、必要に応じて専門家に確認してください。
次にやること:
- 例文A〜Cから近いものを選び、事情の段落を自分の言葉に書き換える
- 「送る前に確認すること」の項目を見て、差し替え漏れと連絡先をチェックする
- 投函したら、返事が来たときに確認する項目(上記)を手元に控えておく
お寺への切り出し方は記事「お寺への切り出し方と、離檀の伝え方」、相談の前に整理しておくことはトップページの「今日できること」にまとめています。
この記事は一般的な文例の紹介です。「これを送れば必ず円満に進む」というものではありません。お布施・離檀料の考え方や連絡の作法は、地域・宗派・寺院によって大きく異なります。実際に進める際は菩提寺や、必要に応じて専門家にご確認ください。最終確認日:2026-09-10。
