「名義人だった父が亡くなったまま、お墓の手続きをしていない」「先祖代々の墓だが、いま誰が使用者なのか分からない」。このお墓を墓じまいしたいとき、名義人が亡くなっている・連絡が取れないというだけで、すぐに「無縁墓」として処理できるわけではありません。まず、現在の墓地・霊園の管理者へ問い合わせることから始めます。そのうえで、名義(承継)の整理をしてから通常の改葬に進むのか、縁故者がたどれず特別な手続きが要るのかが分かれます。改葬許可そのものの流れは記事「改葬許可証とは?遠方でも進める行政手続きの整理」を参照してください。
まず確認する順番
- 現在の墓地・霊園の管理者に問い合わせる。名義人(墓地使用者)が誰になっているか、名義変更(承継)が必要か、必要書類は何かを確認します。管理主体(公営・民営・寺院)ごとに規程が違うため、ここが起点です。
- 承継関係を整理する。名義人が亡くなっているなら、次に誰が墓地使用者になるか(祭祀を主宰する人)を家族で確認します。お墓に縁のある人(親の兄弟姉妹、その子など)に、墓じまいを考えていることを先に共有しておきます。
- 現在お墓がある市区町村(墓地担当課)に確認する。改葬許可申請の書類、申請者が名義人でないときの扱い、縁故者がたどれない場合の手続きを確認します。
自分のケースを切り分ける
「名義人の死亡」「他の親族と連絡が取れない」「縁故者そのものがたどれない」は、必要な手続きが違います。
| 状況 | まず必要になること | どこへ |
|---|---|---|
| 名義人が亡くなっていて、承継できる人(自分や親族)がいる | 墓地・霊園の管理者で名義変更(承継手続き)→ そのうえで通常の改葬 | 墓地・霊園の管理者 → 市区町村 |
| 墓じまいをしたいが、他の親族と連絡が取れず同意がまとまらない | これは「無縁」ではなく親族間の協議の問題。承継や費用分担の考え方を整理する | 墓地・霊園の管理者(協議を示す書面を求められることがある)/記事「墓じまい費用は誰が払う?兄弟・親族での分担の考え方」 |
| お墓に眠る方の縁故者そのものが不明・たどれない(無縁墳墓等) | 改葬許可申請に、官報公告と立札の1年間の掲示など施行規則第3条の書類が加わる | 市区町村 → 実務は行政書士など |
多くの読者は1段目か2段目です。自分が縁故者としてお墓を管理してきたのであれば、そのお墓は基本的に「無縁墳墓等」にはあたりません。
名義人が亡くなっている場合(承継手続き)
お墓の名義人(墓地使用者)が亡くなっているときは、改葬や区画の返還の前に、墓地・霊園の管理者で名義変更(承継手続き)が必要になることが多いです。これをしないと、納骨や区画返還の手続きが進められないことがあります。
誰が承継するかは、民法897条で①故人の指定 → ②慣習 → ③家庭裁判所の順に決まるとされ、「長男だから当然」というわけではありません。ただし、これは承継する人を決める順序で、費用を誰がいくら負担するかまでは定めていません。
必要書類・承継できる人の範囲・手数料は、管理主体(公営・民営・寺院)ごとに異なります。たとえば公営霊園の案内では、承継使用申請書、新しい使用者の戸籍謄本、承継の原因を示す書類(名義人が亡くなっている場合は除籍謄本など)、続柄がわかる書類、本人確認書類、手数料、といったものを求める例があります。霊園によっては「使用者に代わって祭祀を主宰する人だと分かる書類」や「親族の協議がまとまったことを示す書面」を求めることもあります。これはその霊園の手続き上のルールで、改葬許可そのものの条件ではありません。まず現在の墓地・霊園の管理者に、承継の必要書類を問い合わせてください。誰が承継するかで家族の話がまとまらない場合の考え方は、記事「墓じまい費用は誰が払う?兄弟・親族での分担の考え方」にまとめています。
なお改葬許可の申請では、申請者が墓地使用者等でない場合、墓地使用者等(名義人)の承諾書(または名義人に対抗できる裁判の謄本)を添えます(墓地埋葬法施行規則第2条)。名義変更を済ませて自分が使用者になっておけば、この承諾書は不要になります。
縁故者がたどれない場合(無縁墳墓等・施行規則第3条)
お墓に眠る方の縁故者がいない、または分からない「無縁墳墓等」を改葬するときは、施行規則第3条で特別な書類が定められています。通常の改葬書類に加えて、改葬許可申請に次を添えます。
- 無縁墳墓等の写真および位置図
- 官報に掲載し、かつ、お墓の見やすい場所に設けた立札に1年間掲示して公告し、その期間中に申し出がなかった旨を記載した書面
- 官報の写しと、立札の写真
- その他、市町村長が必要と認める書類
ここでの「1年間」は、立札を掲示しておく期間のことです。つまり「縁故者と連絡が取れないから、すぐ撤去してよい」わけではなく、官報公告と立札の1年間の掲示を経て改葬許可を申請する、というのが法令の手続きです。この手続きは区画整理などのために墓地の管理者が行うことが多いものですが、縁故者をたどれない古い墓を承継者側が改葬しようとする場合にも関わってきます。官報公告にかかる費用と、この1年という期間を見込んでおく必要があります(金額の目安は自治体・官報の扱いによるため、市区町村や行政書士に確認してください)。実務は行政書士などに相談できます。
まとめ
名義人が亡くなっているお墓は、多くの場合、墓じまいの前に管理者での名義変更(承継手続き)が要ります。必要書類は管理者ごとに違うので、まず問い合わせてください。他の親族と連絡が取れず同意がまとまらないのは「無縁」ではなく、承継と協議の問題です。縁故者そのものがたどれない無縁墳墓等の改葬には、官報公告と立札の1年間の掲示という施行規則第3条の手続きがあります。いずれも「そのお墓がどの管理主体にあるか」で進め方が変わります。
次にやること:
- 現在の墓地・霊園の管理者に、名義人が誰か・承継手続きが必要か・必要書類を問い合わせる
- お墓に縁のある親族に、墓じまいを考えていることを共有する
- 現在お墓がある市区町村の墓地担当課に、改葬許可申請の書類と、名義人でない場合の扱いを確認する
- 縁故者がたどれない場合は、行政書士など専門家に相談する
相談や依頼の前に整理しておくことは、トップページの「今日できること」にまとめています。全体の流れは記事「墓じまい全体の流れを7ステップで整理する」を参照してください。
この記事は一般的な情報の整理です。名義変更(承継手続き)の要件は墓地・霊園の管理者へ、無縁墳墓等の改葬手続きは現在お墓がある市区町村や専門家へご確認ください。出典:墓地、埋葬等に関する法律施行規則(厚生労働省)第2条・第3条、民法第897条、総務省行政評価局の調査資料。最終確認日:2026-09-10。
